株式会社フロム・ソフトウェア 専務取締役 竹内将典様
フロム・ソフトウェアは日本を代表するゲーム制作会社だ。2022年2月25日に発売したアクションRPG「ELDEN RING」(エルデンリング、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC用)のPC版にDigital.aiを採用してプレーヤーのゲーム体験を守っている。ELDEN RINGは2022年にゲームの世界の賞を総なめにした作品で、累計販売本数は2000万を超えている(2023年5月時点)。ダークファンタジーというジャンルに属し、その魅力は高難易度なアクションが要求されること。プレーヤーの中には、いわゆるチートを使って自分のキャラクターを強化しようとする人たちもいる。そうしたチートを防ぐためにDigital.aiのDigital.ai Application Securityを活用されている。同社専務取締役の竹内将典さんにお話をお聞きした。
―本日は取材の機会をいただきどうもありがとうございます。まずゲームでのプロテクションの必要性について教えてください。
ゲームにおいて、特にネットワークのゲームの要素がある場合、プロテクションは大変重要です。それはユーザーの皆さんの公平性を守るために必要です。プログラムやデータの改ざんを行うことはゲームのルールを守っているプレーヤーにとっては卑怯な行為となります。また、チートはコミュニティー内で問題になるだけでなく、それを放置すれば開発元が訴えられることもあります。そのため、チート対策は非常に重要です。
一方で、チートは年々新しい手法がたくさん出てきますし、そして一口にチートといってもいろいろな層があります。「チートしてやる」って思ってやっている人たちもいるのですが、インターネットに流された「こうやったらチートができます」という情報を見た人が、興味本位の軽い気持ちでチートをしてしまうこともあります。
ぼくらとしては、興味本位でチートをしてしまった人たちを悪意を持ってチートする人たちと同じ扱いで一発BANするのは避けようと考えています。では、どう区別して対応すればいいのか、それは長年の課題でした。
チート対策には、ソフトウェアに侵入できないようにするプロテクションと、どんな人がどんなタイミングでどこにチートを仕掛けようとするかを見つける検知があります。ぼくらの使い方としては、比較的、検知のほうに比重をかけて使っています。Digital.aiは検知に関して非常に有用と考えて採用しました。
検知の課題は、精度を上げることだけではなく、誤検知を減らすことです。チートをしようとしているわけではないのに、チートをしようとしていると検知をしてしまう誤検知も設定によっては起こることがあります。
DARK SOULSシリーズ以来使い続けてきていますので、実績として非常に効果があると思っていますし、その使い方に関しても、より精度が高い検知をするだけでなく、こうすれば誤検知を下げられる、というノウハウが蓄積されています。
―効果についてはいかがでしょうか?
ELDEN RINGではDARK SOULSのときよりも誤検知が減っています。そして誤検知を減らしたことで、さらに検知の精度が7-8%ぐらい上がっています。このパーセンテージは少なく聞こえるかもしれないのですけど、もともとの検出精度が高いですから、そこでさらに改善したという意味では結構大きい数字だと思います。結果として、チートの被害件数も減っています。
検出した内容を見てみて、これは結構悪質だからBANする必要がある、これは興味本位で覗いてみただけだろうからBANは不要であるといった判断は、ぼくら自身ですることにしています。
―プロテクションをかける作業には、やはり時間がかかるのでしょうか?
ゲーム本体にDigital.aiでプロテクションをかける際には、担当プログラマーが半月から1カ月くらい集中して作業をしました。これはDARK SOULSのときとあまり変わりません。
ELDEN RINGのサイズは、データ量の面ではDARK SOULSの数倍あり、例えばマップが大きくなり、敵や武器の種類が増えています。けれどもプロテクションの概念からすると、守るべき部分や種類はそうは変わっていません。外部チェックを含めて3カ月から4カ月ぐらいで処理していることが多いです。ゲームの全体のプログラムの全体像が見えてこないと、どういったところにDigital.aiを適用するのか、どれくらいの機能を適用していくのかを決められないため、その辺の作業プロセスは最終盤になります。Digital.aiでの作業にプログラマーを貼り付けるタイミングを決めるのはいつも難しいですね。
ゲーム本体をリリースした後の、パッチにはあまり時間がかかりません。リリース後に、Digital.aiに関する作業が増えることは基本的にはないです。ソフトを最初にリリースする時には、開発元(Digital.ai)に適切な使い方をしているかチェックを受けるプロセスがありますが、パッチについてはそれもありませんし。
―一度Digital.aiを使用するプロセスを設計してしまえば、そこから先の運用にはあまり手間はかからない、ということですか?
そうですね。Digital.aiそのものがそういう設計になっていますから。それも導入の際には当然考慮した部分です。
ー以前から蓄積されたノウハウの効果も大きいのでしょうね。
ええ。Digital.aiについては100パーセント使いこなしているわけではないですが、ある機能を使ってしまうとおそらくこれはユーザーの皆さんにとってデメリットが出てしまうだろうというのが、導入前から設計上、ある程度想定できている部分もありました。
ー競合製品とは比較されましたか?
はい。もちろんです。ただその製品をとっても完璧なものはあまりなくて、むしろ誤検知が増える製品もありました。ぼくらもかなり慎重にやってはいるのですが、この分野のソフトウェアに関しては100点満点のものはなかなかありません。その中ではDigital.aiについてはトラブルが少ないです。
他社で新しいチート対策ソフトを採用した例を聞いたことがあります。ひどい例では、ユーザーさんから多数のクレームを受けることになってしまったものもあるそうです。あるチート対策ソフトを導入したら、他のゲームが立ち上がらなくなった、という例も聞きます。
そして一番多い問題はパフォーマンスです。ある対策ソフトを入れたらゲームのパフォーマンスが10%食われるとかそういうことも割とあります。 ゲーム開発の現場では、パフォーマンスを落とさず質の良いグラフィックを表示できるようにエンジニアさんが1行ずつコードを見直していますから、対策ソフトのせいで大きな影響があるというのは厳しいです。
対策ソフトのアップデートが原因なのかどうかは分からないけれど、タイミングとしてはそれだろうという感じでチェックをし始めるのですが、これには工数がかかります。(現象が再現するかどうかは)ソフトの内容にもよるので、あるゲームでは起こらなかったけれど、自分たちが作ったゲームでは問題が起きた、なぜだ、ということもあります。
ー問題解決にはSaaSの開発元であるDigital.aiだけでなく、弊社も協力させていただいていますが、
サポートについてはどうでしょうか?
ええ、プロテクションだけではなく、ゲーム開発には海外のソフトウェアベンダーから提供されているものを使っていることが多く、特にミドルウェアと呼ばれるものは基本は日本製のものがほぼ存在しません。ですから、何か海外の製品を採用する時にはそのソフトウェアの機能の検証と同程度に、サポートがスムーズにできるか(受けられるか)ということを重要視しています。
その点、Digital.aiとDigital Stacksさんにはスムーズに対応していただいています。ぼくらもうっかりしている点を、「ここはどうですか?」とちゃんと指摘してもらうこともあり、ありがたく思っています。
ーお役に立てているとお聞きできて、とてもうれしいです。今日はどうもありがとうございました。
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会社情報
会社・団体名:株式会社フロム・ソフトウェア
業種:情報・通信業
製品・サービス:ゲームソフトウェアの企画・開発・販売、インターネット上のコンテンツの企画・開発
企業サイト: https://www.fromsoftware.jp/jp/
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フロム・ソフトウェアの「ELDEN RING」
©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©2023 FromSoftware, Inc.
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